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日々、妄想したりとか。ご飯を食べたりとか。働いたりとか。
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下の話の続きでございます~。
ではでは読んでくださる方は下へ。


あっ!あ!拍手ありがとうございます~!!
お返事お待ちくださいませ~!!嬉しいです!!




 

「治安維持部隊の隊長に折り入って頼みがある! 俺を此処で使ってくれ! 俺も自分の霊力で人の役にたちてぇんだ!」


 北流魂街63番地区に立つ屋敷の重厚な門の前に立つ衛兵二人は、そういうなりがばりと地に額をこすりつけるように土下座してしまった少年を見て困惑していた。
「おい。坊、お前の気持ちは立派だけどよ」
「うちの隊長は穏やかな顔して、あれでかなりおっかねえぞ。子供にも容赦はしねえ」
 いつもその隊長に厳しい訓練を付けられている衛兵の二人は地獄の特訓を思い出しこの子供には過酷だろう、と思った。
「な?もう少し大人になってからでもいい。出直してきな」
 子供の説得に当たっていた二人の前で、門での騒ぎを聞きつけたらしい人がゆっくりと扉を開けて子供の前に現れる。
「誰がおっかないのかな?」
 穏やかにそう告げ現れたのは穏やかな声によく似合う優しげな笑顔を浮かべた青年だった。
「た、隊長っ」
「な、何でもありません!」
 衛兵二人の慌てようから、この治安維持部隊を束ねているのはここにいる青年らしいと少年は知った。一見すると優しそうな雰囲気を持つ青年だったが黒髪の奥から覗く双眸は人の上に立つ才覚を思わせる凛とした厳しさを持っていた。青年は刹那そこにいる少年を見据えるとふ、と息を吐くように気配を和らげた。
「…廊下にまで声が聞こえてきたけど、君ここに入りたいんだって?ここがどういう場所か知っているのかな?」
 慌てる衛兵を他所に青年は門の前で土下座をしていた少年に問う。頷く少年に、青年はにこり、と笑みを深めた。
「何故、…と聞いてもいい?」
「俺は霊力を持ってる。此処は、虚を倒すために霊力を持ってる奴らが集ってると聞いた。俺も力になりたかったんだ」
「それならば、わざわざこんな民間からできた新興団体に来なくても宮仕えの護廷十三隊の死神になればいい」
「…死神は、嫌いだ」
「…………」
「お願いだ、俺をここに入れてくれ。使いっぱしりでもなんでもするよ。俺も街の皆を守りたいんだ」
 真剣な眼差しでそう告げた少年に衛兵の二人はそれぞれ、過去を思い出していた。二人がまだ若かった頃、今ここにいる少年のように、人の役に立ちたい、と、この門を叩いた事があるからだ。少年の姿はあの日の自分と重なった。護廷十三隊の死神になるほどの高い霊力は持っていなかったが、それでも、己が持つ霊力のために村で忌み嫌われてきた二人がようやく自分の存在の意味を得たのは、この治安部隊の隊長が人の役に立ちと情熱を持って押しかけてきた二人を追い返す事はせず、受け入れてくれたからだった。思わず、涙ぐんだ二人の前で、隊長と呼ばれた青年が柔らかい声で少年に告げる。
「おいで」
 その一言に衛兵の二人は思わず驚いて弾かれるように顔を上げたがこの隊長がまたそう言うことをどこかで知っていた二人であった。
「た、隊長、まさかこんなガキを本当に入れるんですか?」
「だいたいこいつ、戦い方すら知ってるのか…」
 衛兵の言葉に、青年がくすり、と笑う。
「少なくとも、戦いに関しては君たちよりも卓越しているだろうね」
「………」
 青年のその言葉は小さく呟くような声で衛兵達の耳には届かなかった。青年は改めて少年を見下ろし、にこりと笑うと、ゆっくりと告げた。
「君を歓迎するよ、名前は?」
「士郎…、」
「そう、僕の名前は・・・」

 

 屋敷に通され、好きに見て回ればいい、と隊の若い男を少年の傍に置いて去っていった治安維持部隊の隊長はそのまま部下らしい男を引き連れて何処かに消えた。
「ここに入隊したいって奴は多いけどよ。滅多に人、入れないんだぜ。お前、隊長が通りかかったところで、運がよかったな」
 そう告げ少年を訓練場に案内しているのは頬ににきび痕の残る人の良さそうな青年だ。青年は治安維持部隊ができた経緯やそれを束ねる隊長の強さや、またその隊長をいかに慕う人々が多いかと熱く少年に聞かせた。少年もまたそれを真剣に聞いていた。
「護廷十三隊の死神も強いけどよ、うちの隊長も負けてねえよ、ここらの虚の動きは活発でさ、そのほとんどがうちの隊長が倒してるんだぜ、すげえ人なんだ、うちの隊長は」
 青年の言葉からは純粋な敬愛がこもっていて、それを聞いていた少年は先ほど自分に向けて優しく笑った治安維持部隊の隊長の姿を思い出していた。

 トイレに行きたい、と告げ、少年は青年に説明された、長い回廊を左に曲がると、その先にある厠には向かわず、窓から屋敷の外に降り立った。長い草木が調度少年を覆い隠すその場所で、少年は着ていたみすぼらしい着物の何処にそんな高価なものが隠れていたのだろうというような、電子機器を取り出して徐にそれを指先でいじりだすと、ピピ、という発信音が小さく鳴る音と共にそれを耳に当てた。
「松本、俺だ」
『…俺ってどちらの俺様ですか。オレオレ詐欺ですか』
「ふざけるな! 日番谷だ!」
 電子機器の向こうで変わらず鷹揚な口ぶりの部下の声に思わず声を荒げたのはいつもの白銀の髪を黒に染め、特殊な目薬で瞳孔の色を変えた少年、…こと、護廷十三隊十番隊隊長日番谷冬獅郎だった。
『なあんだ、隊長か』
 伝令心機の向こうで明らかに面白がっているような声でそう告げる乱菊に舌打ちをこぼしつつ日番谷は言葉を重ねる。
「あまり時間はねえ、手短に言うぞ」
『って事は敵の本拠地に潜入できたんですね?』
「ああ、治安維持部隊なんて大層な名前を持った連中だ」
『また嫌味な名前ですね~、そんな名前持った部隊がクスリ垂れ流してるなんて』
「ああ、だが、今の所そんなおかしな気配は何処にもねえ。民からも慕われている。それからこの部隊を束ねている男にも会ったが、総隊長達が期待している男じゃない」
『えっ。もう幹部と接触できたんですか。さすがですね。でも、期待してる男じゃないって、宍道武彦じゃないって事ですか?』
「ああ、そうだ。名前も年齢も容姿も異なる。写真で見た限り宍道はすでに還暦を迎えている容姿だが、ここにいるのはせいぜい二十代後半か、三十代前半の男だ。俺には、紫雲由時(しうんよしとき)と名乗った」
『分かりました。その男の経歴を調べます』
「頼んだ、また何か分かれば符牒(暗号)を使って連絡する」
『了解しました』
 そのままぶつり、と通信を切ろうとした日番谷に追いすがる声が届く。
『あっ隊長!』
「…まだ、なんかあるのか」
 伝令心機を耳に当てなおした日番谷にその声はしっかりと届けられた。
『ちゃんと無事に帰って来て下さいね!皆待ってますから!危なくなったら逃げるんですよ!』
「…お前な、誰に向かって言ってるんだ」
 日番谷の仕事振りを見ている乱菊がかつて潜入捜査で日番谷が失敗を犯した事が無い事を知らないはずがない。
『隊長がヘマなんかしないって信じてますけどね、これくらい言わせてくださいよ。どれだけ私達十番隊の隊士が我慢して貴方を一人で送り出したと思ってるんですか』
「相手が元護廷十三隊の三席で、他の連中は面が割れてる可能性があるっつーんだから、俺が一人で行くしかねえだろ。潜入が見つかった時の事を考えれば何かあった時に下じゃ対処できねえ相手だ。人を何人入れても危ないだけなら俺が動いた方が一番いい」
『分かってますけど、気持ちの問題です』
「…気持ちか」
『気持ちです』
「分かった。なるべく危険は犯さない、何かあったらお前たちに報告する。早く調査を終えて、そっちに戻る。これでいいか?」
『はい』
 伝令心機の向こうで満足げに答える乱菊の声にしばし日番谷は苦笑して、けれど、眼差しを険しくした。
――すぐ戻る。
 それは、きっと言葉通りになるだろう、と日番谷は思った。時間はかけない。否、かけれない。日番谷は刹那紫雲と名乗った治安維持部隊の隊長の姿を思い出して険しく眉間にシワを寄せた。あの時青年が呟いた言葉は、衛兵の二人には届いていなかったようだが、日番谷の耳にはしっかりと聞こえていた。
”少なくとも、戦いに関しては君たちよりも卓越しているだろうね”
 それは己の霊圧を隠してここに潜入した日番谷の本当の能力を見抜いて告げた言葉か。それとも、既に自分が護廷十三隊の死神である事を知っていて告げた言葉か。
 どちらにせよ、あの青年がただの善意だけで自分をここに向かえ入れたのではないだろう、と日番谷は考えていた。青年の目は冷静に己という人間を推し量ろうとする人を観察する眼差しを持っていたからだ。それは既に部下を抱えた1個隊を任されている日番谷だからこそ抱いた、言葉で言い表せない感覚だった。勘といってもいい。
(俺の正体に気付いていないにしろ少なくとも、あの男は俺を警戒している)
 そして、その勘はあながち間違ってはいないだろう。
 何かあれば、すぐさま脱出する算段をしばし頭の中で整え、日番谷は、そんな事を告げれば心配させるだけだと知っているので、代わりに「この任務が終わったら」と、乱菊に告げた。
「この任務が終わったら皆で美味しいもの食べにいこうぜ」
 もちろん、日番谷の告げる皆とは、日番谷が大事に育ててきた十番隊の隊士、その人たちである。
 伝令心機の向こうで乱菊がふふ、と笑う声が聞こえて、日番谷はようやく伝令心機をぷつりと切った。


 そしてこの日抱いた勘が外れていなかった事をそれから二日後の夜には既に日番谷は知る事となるのだった。
 

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なんとかして、総隊長が出したいらしい…(笑)
前に乗せたのとは違う話ですが、思いついた部分だけつらつら書いてみました。
読んでくださる方は下へ~。

こっちの方が(書いていて)楽しいです。へへ。

五月三十一日、追記しました~。
まだまだ続いてます。完成…したらサイトに…!

 

「集ったのは駒村と…浮竹以外か」
 その日、一番隊舎にいたのは、七番隊そしていつもの如く病欠である十三番隊を除く11名の隊長たちだった。その筆頭である一番隊隊長山本が10人の隊長たちを一瞥して、重々しく口を開く。
「うむ…。では、隊首会を始める!」
 だん、と地を叩いた杖の先が、大きく床を鳴らした。
 

 尸魂界で最強といわれる護廷十三隊の隊長たちの中でも、一番年若く、その座に就任した十番隊隊長日番谷冬獅郎は、いつもは年寄りの町内会さながらのあまり意味のない隊首会をこの日も億劫に思っていた。世は泰平。取り立てて大きな討伐も事件もない、昨今。隊首会とは名ばかりで定期連絡を入れた後には、総隊長のお喋りに付き合わされるだけの隊首会には飽き飽きしている。正直、その話が現世で話題の寿司屋やら京料理の話に及んだ時には、オヤジ達のくだらねえ話はどうでもいいから早く隊舎に戻って仕事してぇな、と心の中で毒づくのが真面目な日番谷の性分だった。
 しかし、この日の隊首会はいつものそれとは明らかに空気が異なった。張り詰めた空気は静寂に似ていたが、それよりも硬く、一瞬の気の散らしもできないような隙の無さがあった。常人であればこの空気に圧されてそれだけで地に膝をつけただろう。元より近寄ることもできない筈だ。空気は重く渇いてそして、ぴりりと熱い。一番隊山本元柳斎重国総隊長が放つ霊圧だった。
 その中でも何事もなく飄々と立っていられるのはここに集った隊長達だけであることを日番谷も知っている。彼らはいつもの気の抜けた表情ではなく、何千人もの部下を束ねる”隊長”の顔で山本を見ていた。その姿は、やはりさすが、というべきか。まだ隊長になって日が浅く、そして、一番年若い日番谷にはない、貫禄というものがある。人を束ねる厳しさを供えた凛とした空気を彼らは共通に合わせ持っていた。その隊長達に囲まれ、見劣りしないほどの存在感を表している日番谷こそ、既に人並みをはずれた逸材であると、他の隊長達は知っているのだが、彼らがそう思っていることを当の本人は知らない。


「宍道武彦(ししどうたけひこ)、…か」
 その日、二番隊隊長砕蜂が隊首会で総隊長に報告した一人の男の名に、首を傾げたのは日番谷ただ一人だけであった。
「はい、北流魂街63番地区で、クスリが流れているという情報を、たまたまその地に討伐に出ていた隊士が聞いたようで、調べさせたところ、確かにクスリを裁いている男を見つけました。詰問したところ、どうやら組織立っての動きのようです」
 クスリは、ここ尸魂界ではご法度だった。人を廃人にし、街で平和に暮す一般人にも影響を与える可能性の高いクスリを一番忌み嫌っているのは総隊長であるため、クスリの取り締まりは銃の流用や、軍資金に使われる事の多い塩の交易よりも厳しく執り行なわれている。
「その組織の上に、宍道がいるというんだね」
 藍染の確認に、可能性は高い、と砕蜂が頷く。
「一生飯に困る事はない、と誘って、流魂街で霊力で持つ村や街のはみ出し者を集めて、クスリを売らせているようだ。クスリを裁いている連中はどれも下っ端で、上の連中までは知らぬ者が多いが、一人、宍道武彦の名を吐いた」
 恐らく砕蜂が、クスリを裁いていた男に、その名を吐かせるためにあらゆる手段をのちいたのであることはここにいる隊長達の誰もが察したが、それは賢明な彼らが問う事はない。知らなくてもいい現実はあるものだ。
「もしそれが本当に我々の知る宍道武彦ならば」
「へっ、あの頃は奴とは切りあえなかったからな。この任務俺が出てもいいぜ」
 嬉々として戦闘意欲を示したのは更木である。
「私は外させてもらうヨ、興味はないね」
 続いて涅。
「僕も遠慮しよかな~、あのおっさんごっつい嫌らしい技の出し方すんねん、僕の神槍とは相性があわへん」
「君はやる気がないだけだろう?市丸」
 便乗した市丸と、笑いながらもそれを諌める藍染。
「総隊長、宍道は貴方の恩を仇で返した男。この任務は、私に」
 そして、東仙。
 他、諦観を決めた隊長達の前で最後に締めくくったのは八番隊隊長京楽。
「また、厄介な男が出てきたもんだねえ」


 日番谷は彼らの言葉から宍道武彦なる男の存在を知らないのは自分ひとりだけであるらしい、と言う結論に至った。だが、冷静に思考を巡らせる日番谷はここで、その男が何者かであるかということは問わない。しばしの重い沈黙の後、総隊長が、隊長達を見据える。その瞬間、日番谷は嫌な予感を抱いたが、総隊長の視線はすぐに砕蜂に向けられた。
「砕蜂、宍道が関わっているという裏はとれておるのかね?」
「はっ。お恥ずかしながら、あの男は元は隠密機動の出。内部事情に詳しくこちらの面も割れている為調査は思わしくありません」
「…じゃろうな。良くも悪くも勘のいい男であったからの」
「が、必ず突き止めて見せます。今しばらくお待ちください」

 砕蜂の言葉にひとつ頷いた後、山本は日番谷を再び見据える。
「日番谷隊長」
「はい」
 名を呼ばれ、一歩前に出た日番谷はこの時には既に己の予感は確信に変わりつつあった。しばし思いを馳せるように目を細めた山本に気付きつつ、日番谷は総隊長の言葉を待った。
「流魂街の悪童が、一人、二人、興味本位でクスリに手を出しているだけならば、捨て置こう。じゃが、それが組織であり、そして、宍道武彦が関わっているならば…」
「………」
 山本は言葉を途切れさせた。何かを思うようにしばし瞑目し、日番谷を見据える。そこには既に迷いの一切を取り払った厳しい目をした一人の男の姿があった。
「この任務の指揮はおぬしに任せる、その為の権限と人員を此処で与える」
 それ即ち、日番谷と同格である他隊の隊長及び、その隊の隊士達を好きに動かせるという事だった。
「必ずクスリを売りさばいている首謀者を突き止め、組織を殲滅せよ、―――よいな」
 日番谷はしばし山本を見据えひと呼吸後、諦めと共に告げた。
「御意」


 隊首会後、一人総隊長の元に残された日番谷は、総隊長との話を終えた後、執務室を出てすぐに、回廊の先に一人の男が自分を待っている姿が見てあからさまに溜息をついた。
「日番谷はん。迎えに来たったで~」
「だから、俺は行かねえっつったろ。市丸。何で面白くもねえのに、隊首会以外にもおっさん達と顔つき合わせて、しかも、飯食わなきゃいけねえんだよ」
「隊首会の後の隊長達との食事会は恒例やもん、諦めや。皆君のこと待ってんで」
「だから、行かねえって。隊舎に戻って仕事させろ」
「まあまあ、たまには僕らとゆっくりご飯もええやろ」
「たまにはって言って結局毎回じゃねえか」
「……日番谷はん、もしかして総隊長に任務振られたん結構怒うとる?」
 押し問答をしながら回廊を歩いていた二人は、市丸の何気ない一言に凍りつくような空気に変わった。一呼吸後、日番谷の声が響き渡る。


「ったりめえだろ! 一番割りくってんのは俺じゃねえか!」

 


「宍道武彦は元護廷十三隊の席官だった男だよ。ある時、事件を起こして出奔したが、隠密機動に捕まってね、起訴されて流刑になった。ちょうど君が死神になる少し前の事件だね」
「宍道武彦は三年前に刑期を終えている。その後の消息は知れんがな、つい最近、北流魂街でその名を聞くようになったというわけだ」
 宍道武彦って誰だよ、という日番谷の至極最もな心の中の疑問に答えたのは、食事会で目の前の席に座った藍染と隣に座った砕蜂だった。日番谷は総隊長を含めた三名の隊長を除いたそうそうたる顔ぶれの座敷の中で、静かに藍染達の言葉を聞いている。宍道武彦に関して、隊首会の後、一人残された日番谷が総隊長から告げられた情報と今藍染達が語る言葉は同じであった。ただ、彼らの方がより詳しくそれを語ってはいる。
「いいのか?」
 日番谷は懐石弁当から視線を上げて二人に問う。
「その男の事を俺に喋って」
 藍染は一瞬、驚きを隠せない様子で目を見張り、続いてふ、と笑った。懐石弁当の中の椎茸を箸でよけている日番谷の姿が同時に目にとまったからだ。
「駄目だよ、日番谷君。好き嫌いをしてちゃ、大きくなれないよ?」
 その言葉に日番谷は、溜息を吐いた。目の前には他意のない穏やかな顔で笑う藍染の姿がある。
「お前最近、浮竹に似てきたな」
「え?そうかな?」
 どう思う?朽木君。
 と、真面目に、隣に座っている六番隊隊長朽木に問うている藍染の人選はきっと間違っているであろうとここいる誰もが気付いたがあえてそれを教える者はいない。これまた真面目に思考し答えようとしている朽木を遮って日番谷が再び口を開く。
「宍道武彦については緘口令がひかれてるんだろ?」
 日番谷の言葉に風が凪ぐように、座敷内に刹那静寂が満ちた。それを打ち破ったのは、この栗きんとんめっちゃ美味しいな~、という市丸の言葉である。
「鋭いな、…総隊長に聞いたかい?」
 市丸の言を無視して苦笑交じりに日番谷に訪ねたのは京楽だ。
「いや?」
「……」
「総隊長が俺に言ったのはその男が護廷十三隊の死神だった事と、隠密機動の出だが、一番隊の三席にいたって事。事件を起こして免官されて、実刑食らったって事くらいだ。俺がそう思ったのは単に、いつもは面白がってあることない事脚色して、うるせえくらい情報寄越してくる市丸が気持ち悪いくらいにその男のことに関して黙ってるからな、そうじゃねえかと」
 日番谷はん、ひどいわ、という市丸を無視して日番谷は続ける。
「三席にいたってくらいだから、例えそいつ自体瀞霊廷からいなくなっても、名前くらいは俺の耳にも入ってくるだろ、それなのに三席が事件起こした事も、そいつが実刑くらってたことも、一度も聞いた事はねえからな」
「何の事件を起こしたかは?」
「なんも」
「山じいも相変わらずだねえ」
「正直俺は知らねえ男だし、そいつが昔に起こした事件にも興味はねえ、ようはクスリ垂れ流してる大元を見つけて断てばいいんだろ?」
 そして日番谷は人の上に立つ才覚を漂わせる厳しい双眸で二番隊隊長砕蜂を見据えた。

 

「そいつは何処にいるって?」




…またまた、今しばらくお待ちください(笑)
まだまだ続きを書いております。

 完成するか分からない。つらつらと書きあぐねっている物語です。
 読んでくださるかたは下へ~



















 


 季節は実りの秋。
 収穫の秋である。


 流魂街ではいつでも稲刈りには人手が足りない。霊体である流魂街の住人はそもそも腹が空くという生前は当たり前に持っていた体の欲求がない。そのため彼らは働く意欲にかける。身を粉にして糧を得なくても、死なないという事実が彼らの勤労意欲を欠けさせるためだ。
 それでも、ごく僅かだが、食べなければ餓えるという自然の欲求を体に残す者達が存在していた。霊力を持った者達だ。彼らは食べなければ腹が空いたし、それで餓えて死ぬ事もあった。死の世界であるここ尸魂界での死は、すなわち完全なる消滅である。故に彼らは食べることに、つまりは、生きることに、他の零体よりも貪欲であった。現世で幼い死を迎えここ流魂街に流れてきた冬獅郎もまたそんな一人だった。

 霊力を持った者の生き方には大きく二通りの道がある。一つは、ここ流魂街で農耕を生業とし糧を得て生きて行く方法だ。現世と違って他国との貿易のない死の世界では当然のことながら生活水準は鎖国をしていた日本のそれと等しい。発展の必要性がなかった為利便性のある農機具に欠ける流魂街ではこの日々の糧を得る事が大変な重労働であった。
 もう一つは霊力を最大限に生かし戦いを生業とする道だった。彼らは自分の魂の半身である斬魄刀を持ち、死してから魂の変異を遂げた「虚」に罪の浄罪を与える、魂の調整者の役割を担っていた。彼らは世界の中心部である瀞霊廷に住まい、尸魂界で生を受けた貴族達と混ざって生活をした、所謂花形職業であった。この世界で彼らは「死神」と呼ばれた。


 冬獅郎はその日、畑での収穫を終え帰宅した。町では共に同じ霊力を持つ者同士で一つの組合を作り一斉に収穫作業をする。一年の飢えを満たす実りの大半は殆どここで収穫された食物たちだった。田畑で忙しく働いてクタクタに疲れていた冬獅郎は流魂街の祖母の家に帰宅するなり、体を洗って布団に直行して泥のように眠った。目が覚めたのは、明け方。まだ日も昇らぬ刻限だった。
「……シロ……?」
 上半身を起こしてじっと外の気配に耳を欹てている冬獅郎に、隣で眠っていたはずの祖母が、ゆっくりと身を起こしていぶかしむようにその名を呼んだ。冬獅郎をシロ、と呼ぶのは、またそれを許すのは、ここにいる祖母と、そして流魂街に来てからというものの何かと自分の世話を焼きたがる桃という姉のような存在だった。しかしその姉のような存在は今、ここにいない。一年前。自分の霊力を役立てたいと、死神になる為に瀞霊廷へ旅立っていったからだ。
「…ばあちゃん」
 振り返った冬獅郎がゆっくりと祖母を呼ぶ。その顔は子供にしては険しく、けれど、声は祖母を気遣う優しさを滲ませていた。
「…またかい?」
 冬獅郎の様子から祖母は彼が感じているものを言わずとも察した。祖母の声に冬獅郎は一つ、頷く。
「すぐ戻ってくる」
 そう告げ立ち上がった冬獅郎を祖母は見上げる。その双眸が心配げに揺れるのを見て冬獅郎はかすかに、笑った。
「心配するなよ、祖母ちゃん。俺を誰だと思ってるんだ」
「シロ…」
「片付けて、すぐ戻ってくるから」
 祖母はまだ成熟しきらない冬獅郎の体を引き寄せて腕の中にしまった。その瞬間冬獅郎は身を捩り、祖母の肌には冷たさがつたったが、そんな事は問題ではなかった。
「ああ、本当に、何でお前が…」
 その言葉の続きには、「何故お前だけがこんなに大きな力を持ってしまったのだろう」という嘆きが待っていたが、祖母は皆まで告げることはできなかった。それを祖母の優しさだと知っていた冬獅郎は、そのまま刹那祖母の腕の中で目を閉じて立ち上がった。
「…行って来る」


 こんな力さえ持っていなければ。
 祖母が告げなかった思いは、この世界に流れ着いてきてからというものの冬獅郎が痛いほどに噛み締めてきた思いだった。冬獅郎は霊力を持っていた。何故かは知らない。現世ではあるはずのなかった霊力が流魂街に来てから芽吹くように目覚めたのだ。それは、大気を凍てつかせる氷雪の力だった。それは子供の体には明らかに過ぎたる力だった。制御できない力に祖母を病まで追い込んだ事もある。自分の持つ力が凶器であると知った冬獅郎は初めて自分の存在を厭うた。
 死神になれ、と瀞霊廷から来た女が冬獅郎に示唆したのはそんな頃だった。松本乱菊と名乗った女は、彼女自身も強い霊力を秘めた死神だった。けれど、冬獅郎は死神にはならなかった。代わりに力をコントロールする術を自力で身につけ街の警護に当たるようになった。あれから半年。冬獅郎は今も祖母の傍で生きていた。
「…あっちか」
 引き戸を閉めてすぐ冬獅郎は南西に走った。体の奥に流れる力が其方に行け、と告げている。其処に”敵”はいる事を、本能で知っているのだ。流魂街で暮すものの敵。それは魂を食す”虚”でしかなかった。力を扱う術を得るようになってからというものの冬獅郎は流魂街に時折現れる虚と戦い、町の者達を守るようになった。そうして自分の居場所を得てきたのだ。
 南西に走って林を抜けてすぐ、冬獅郎は目を見張った。まだ日も空けない夜半。南西の空が燃えるように赤い。
「なんだよ、これ」
 風が運んだきな臭さに再び絶句する。燃えるように赤いのは空ではない。文字通り大地を燃やす炎が、天に届いているのだ。走れば走るほど、大きさを増していく炎が視界を覆った。
「嘘、だろっ」
 そして、冬獅郎はその炎がさし示す方角に絶望する。その場所は一年、土を耕し稲を植え育て、そしてようやく明日にも収穫を控えた田園だったからだ。田畑が、燃えていた。

 

「何やってるんだよっ! 早く火を消せ!」
 燃える田園、生き物のように膨れ上がる炎を前にして、近隣の村の住人達が呆然と立ち尽くしている姿に、冬獅郎は彼らをかき分けながら喚くように告げた。その時、炎に飛び込んでいく勢いで駆けていこうとする冬獅郎を引き止める強い腕があった。細い冬獅郎の手をやすやすとつかみ上げて、制したのは冬獅郎も見覚えのある霊力を持つ男だった。一度は死神を目指し瀞霊廷へ向かい、けれど、死神になれずに再びここ流魂街で田畑を耕す生活を余儀なくされた男だった。
「お菊さんとこの坊か…やめときな」
「なっ、」
 その諦観の一言に一瞬怒りを双眸に宿した冬獅郎は、男が顎で示した方角を見やった。
「瀞霊廷の死神様のご出陣だ、俺たちの出る幕じゃねえよ、逆に殺されちまうぜ」
「え?」
 そこにいるのは漆黒の袴を着た男達だった。片手に刀を持ち共に同じ方角を見据え剣を構えた男達は、同じ漆黒の袴に一人だけましろの羽織を重ねた男の後ろに控えていた。
「護廷十三隊総隊長山本元柳斎重国様だよ」
 業火を前に一の字を背負った老人の姿を見た瞬間、冬獅郎はこの燃え盛る炎がその老人の霊力である事を悟った。
「向こうの山からこの土の下まで、駐在型の虚の巣が伸びているのが調査でわかったんだと。でかい巣らしい。虚の動きが活発になる前に手を打つつもりなんだろう。さっきから巣穴を燃やされて他の出入り口を防がれた虚たちが此処から次々飛び出してきやがる、出てきたところを死神たちが刀で一振りよ。一匹残らず始末するつもりなんだろ」
 冬獅郎がさっき眠りを起こされたのはその苦しさから力を解放した虚の霊力を感じ取ってのことだろう。
「…だからって、稲を燃やすなんて!俺たちはどうなるんだ!」
 ここで稲を刈り取れなければこの西流魂街に住む多くの霊力者達が餓えてしまうのだ。冬獅郎はこの燃え盛る炎を前に何も行動を起こさない村人達をねめつけるように告げた。自分達は一体何のために田畑を耕してきたのかと。
「諦めろ、坊」
「な、」
「もうなんもかんも遅えよ、皆燃えちまう」
 その時、冬獅郎はゴウッという強い風の音を左耳で聞いた。振り返った先、ましろの羽織を霊圧の震えでたなびかせた老人が一振りの杖を振りかざすのを見た。その瞬間、赤い赤い炎が生き物のように膨れあがり、その炎の先がまだ燃えていない田園にまで広がるのを見た。


「やめろ―――!」


 土の中から炎に身を包まれて苦しげに断末魔をこぼす虚の姿が、見えた。全てを焼き尽くす炎。この世の全てを灰と化すこれは業火だ。
「坊!」
 冬獅郎は、引き止めた男の腕を振り切って炎を取り巻く村人の間を掻き分けると、炎の前に飛び出した。男の制止の声も耳に届かなかった。それほどこの理不尽な炎に怒りを覚えたのだ。
「馬鹿がっ」
 舌打ちした男の声も冬獅郎には聞こえない。炎に照らされて尚、漆黒の色を身にまとった死神達の前に冬獅郎は立ちはだかる。凛とした大気の冷たさが一瞬で薄氷を形作り、炎の行く手を遮った。
「?!」
「なんだ、村の子供か?」
「総隊長…お下がりください」
 突然姿を現した冬獅郎に死神たちがいっせいにこの炎を前にしても臆さずに死神たちを見据える子供を振り返った。

「――――…霊力を持つ子供、か」

 総隊長と呼ばれた老人が冬獅郎を見据えぽつり、と口の中だけで呟く。今、村人達の目の前で炎と氷が天を二分するように激しくせめぎ合う。その現実に死神たちは村人達とは違う意味で絶句した。総隊長が作り出す炎は、比喩ではなく、まさしく地獄の炎。最古にして最強の力を誇る火なのだ。それを遮る氷が、目の前の子供の霊力だと知ってこの子供の持つ力の強さに言葉を失ったのだ。
「これ以上畑を燃やすのをやめろ! 今すぐに火を消せ!」
 千年。総隊長の座に居続けた山本は、死神達にとって最強と仰ぎ見上げる存在だった。そんな山本に向かって畏怖も敬愛もなく告げられた言葉に死神たちの子供に向けられた驚きが怒りのそれに代わる。
「な、」
「お前、総隊長に向かってなんという口をっ」
 

 

 


続き・・・・頑張って、書いてます。笑。



拍手ありがとうございます、メッセージも本当にありがとうございます。
嬉しいです。後日改めてお返事させてくださいませ~^^



鰤を読みました。以下感想…というか呟きです。




色々驚く展開が待っていたんですが、
何より乱菊さんの思惑が、またお預けくらったショックが隠せません…!
どんだけ焦らすの先生。日番谷が雛森刺した所からもう本当にいっぱいいっぱいなんだぜ、私。
鰤、いつも薄目で見てます、毎回どんな展開が待ち受けているか怖いからです…笑。(当たり前だけど薄目で読んだところで怖さは半減しないんですけど、なんとなく和らぐような気がします)

一心パパの技・・・!えぇえ?!どういうこと?!




もうこれ以上謎を増やされるより、
今までの散乱している伏線をどこかで回収してほしいなあ…






 家帰ってきて、パソコン開いて、好きサイト様が更新されているとそれだけで、ふぉ~ってなります。ふぉーって。なんかよくわかりませんが、幸せな感じです。笑。


 わりとばたばたしてますが、元気でやっております。この間また仕事でミスしまして、次の日怒られる気まんまんで、心を物凄い補強して(笑)出社したのですが、「ああ、そこ?まだ教えてないとこだったから、いいよ」で、すみました。セーフ!(いや、全然セーフじゃない)しかし連絡ノートにはミスした私の名前がオンパレードで、なんだか恥ずかしいことになっております。「うおぉ、なんか凄いことになってんねー」なんて長年勤めてる方に笑われる始末。…で、ですよね。


 教育担当の方に、今日呼び出されました。何かと厳しい方でして(この方にお叱りを受ける時には年甲斐もなく、本気で泣きそうになるんですが。)「ちょっと来てください」なんて言われた時には、物凄い動悸が激しくなりまして(笑)、しかし、部屋に入った途端、「あのね、中村さんはね、今のままでいいです」と、言われて、思わず、一瞬ぽかーん、としました。(ここで、飴がくるんか!)
「中村さんは今のままでいいです。ミスも自分で気付くから、それでいいんです。もっと自分優先で。自分大事にして。自分の都合でいいですよ」
 色々、極まって、本気で、泣き入りそうになりました。不意打ちでした。本当に。泣かせるお人や…。頑張ります。ありがとうございます。こんな事口にした事もないのに思わず「これからもご指導お願いします…」って、言ってました。でも、お手柔らかに~お願い~します~。褒めたら伸びます~(多分・笑)
 そして、来月またしても殺人的な出勤だったんですが、この方が本社と掛け合って下さって(私の)休みをもぎ取ってくださいました。小一時間くらい本社の方と私の休みのことで目の前で電話しているので、胃がきりきりなりました。色々あれで、本当にびっくりしましたし、いたたまれない感じでした。むしろ、私出社した方がいいんじゃ?この忙しい時に休んでて大丈夫なんですか、状態だったんですが、教育担当の方が「その気持ちだけで充分だからいいよ、休みな。これ以上無理させらんないから、足りない分は他から人、よこさせる!」と、本社からは休みを入れる事をあまりいい顔されなかったんですが、結局この方が、来月(試験もあるからなんですが、)休みをかなり私都合に、とってくださいました。私、これで試験落ちたら本当に皆さんに土下座したいんだぜ。




 そんなわけで、毎日元気です。
 今日も過去問してきます~。おやすみなさい。
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